プレスリリース・研究成果

従来の40倍もの巨大ファラデー効果を示す薄膜材料の開発に成功

2018/03/29

45年ぶりの新しい磁気光学材料の発見

概要

 金属材料研究所の高橋三郎准教授は、磁材料研究所の小林伸聖主席研究員、池田賢司主任研究員、東北大学学際科学フロンティア研究所の増本博教授、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構先端基礎研究センターの前川禎通センター長、グウ・ボウ副主任研究員の研究グループとともに、全く新しい発想による磁気光学材料の開発に世界で初めて成功しました。開発した材料は、ナノグラニュラー構造と呼ばれる、ナノメートルサイズの磁性金属粒子をセラミックス中に分散させたナノ組織を有する薄膜材料であり、光通信に用いられる波長(1550nm)の光に対して、実用材料であるビスマス鉄ガーネットの約40倍もの巨大なファラデー効果を示します。

 磁気光学効果の一つであるファラデー効果を示す材料は、光アイソレーターに代表されるように、光デバイスや、とりわけ光通信システムに広く用いられ、先端情報技術には欠かすことができません。しかしながら、1972年にビスマス鉄ガーネット(Bi-YIG)が発見されて以来、Bi-YIGを超えるファラデー効果を有する物質は見つかっていませんでした。

 この新しい材料は、45年ぶりに見出され、従来材料よりもはるかに大きなファラデー効果を示す磁性薄膜材料です。この材料を用いることにより、光デバイスの大幅な高性能化、さらに小型化・集積化が可能となります。従来の電子を信号とする電子デバイスの進化と同様に、光デバイスが集積化されれば、いうなれば電子に代わる"光子"集積化回路が可能となり、電磁ノイズの影響が無く、高密度情報伝達が可能で、大幅な省エネルギー化を実現することができます。

 本研究成果は、英国科学誌「Scientific Reports」に3月21日付で掲載されました。

 詳細1: プレスリリース本文 [PDF: 525KB]
 詳細2: Scientific Reportsウェブサイト [DOI:10.1038/s41598-018-23128-5]

  ナノグラニュラー膜におけるファラデー効果のイメージ図。(ファラデー効果: 磁性体に加えた磁界に平行な方向に入射する光において、磁性体を透過する光の偏光面が回転する現象)