プレスリリース・研究成果

ガラスと通常の固体の本質的な違いを発見 -コンピュータシミュレーションによってガラスの特異な振動特性を解明-

2017/11/01

 東北大学金属材料研究所の芝隼人特任助教は、東京大学大学院総合文化研究科の水野英如助教、池田昌司准教授との共同研究により、ガラスと通常の固体では振動特性が本質的に異なることを発見しました。
固体を叩くと音がでます。これは、固体に固有な分子振動のパターンが音波であるためです。音波は空間的に広がった波であり、デバイ則と呼ばれる法則に従います。しかしガラスには、このデバイ則では説明できない振動パターンがあることが古くから示唆されてきましたが、それがどのようなもので、どのような法則に従うかは分かっていませんでした。
 本研究は、分子レベルのコンピュータシミュレーションによって、ガラスには音波に加えて、音波とは全く異なる、空間的に局在化した振動があることを発見しました(図)。さらに、この局在振動は、デバイ則とは異なる全く新しい法則に従うことが明らかにされました。この結果は、ガラスが通常の固体とは本質的に異なることを決定的に示すものです。
 本成果は、長年論争となっていた、ガラスの振動特性の問題に終止符を打つものです。さらには、ガラスの熱的・力学的性質の基礎理解に大きなブレークスルーをもたらし、新しいガラス材料を開発する技術へと繋がるものと期待できます。
 本研究成果は、2017年11月27日付けの日経産業新聞に掲載されました。
 
 詳細1: プレスリリース本文 [PDF 792KB]
 詳細2: Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America ウェブサイト [doi: 10.1073/pnas.1709015114]

左図:日常生活でよく用いられる、ガラスで作られたコップ。右図:コンピュータシミュレーションによって計算されたガラス。分子は不規則な状態で配列する。