金属材料研究所附属強磁場超伝導材料研究センター(以下強磁場センター)は、株式会社東芝、古河電気工業株式会社と共同で、高温超伝導材料を用いた無冷媒高温超伝導磁石の開発を行い、直径52 mmの室温実験空間に24.6テスラの強磁場を発生させ、無冷媒超伝導磁石の発生磁場世界記録を大きく更新しました。
無冷媒超伝導磁石は、他の強磁場磁石と比べて、コスト・安全性・利便性・柔軟性など多くのメリットを有する電磁石です。この利点を生かせば、内部磁場の解析手法である固体NMR *3などの物性研究や、強磁場中の材料プロセス研究に広く用いることが可能となります。さらに今回、24.2テスラの長時間保持が実証され、 超伝導磁石を用いた世界最高磁場におけるNMR測定にも成功しました。 開発した無冷媒超伝導磁石は、世界最高の実用超伝導磁石として全国の研究者に公開され(全国共同利用)、今後24テスラ級の強磁場応用が拓かれていくものと期待されます。また開発によって得られた超伝導磁石技術は、より強い磁石の開発や超伝導磁石を用いた機器(MRIや加速器、核融合など)への応用が期待できます。
本成果は「Superconductor Science and Technology」に掲載されました。 また著者らはこの成果により未踏科学技術協会第21回超伝導科学技術賞を受賞することが決定しました(3月17日授賞式)。授賞式の詳細は超伝導科学技術研究会のウェブサイトをご覧ください。
詳細1: プレスリリース本文 [PDF: 719KB]
詳細2: Superconductor Science and Technology ウェブサイト [DOI:10.1088/1361-6668/aa6676]
新しく開発した25T無冷媒超伝導マグネットの外観とコイルイメージ。高さ1.2 m幅2.8 m × 奥行き1.4 m。コイルは外からニオブチタン(水色)、ニオブ3スズ(青)、ビスマス系高温超伝導コイル(赤)の3種類によって構成されている。