量子表面界面科学研究部門(齊藤グループ)は、金属物性論研究部門(前川グループ)、磁性材料学研究部門(高梨グループ)、慶應義塾大学、FDK社と共同で、モット絶縁体にスピン流(電子スピン角運動量の流れ)を注入し、長距離伝搬させることに成功しました。更に、この効果により絶縁体も電気信号を伝送できることを示しました。これまで絶縁体中のスピン流を利用する方法はありませんでしたが、固体中の量子相対論効果(スピンホール効果)および金属とモット絶縁体界面での交換相互作用を用いることで初めて可能となりました。この成果は、エネルギー損失の少ない新しい情報伝送デバイスとしての応用が期待されます。本研究はJSTの目的基礎研究事業の一環として行われたものです。本研究成果は英国科学誌「Nature(ネイチャー)」(2010年3月11日付)に掲載されるとともに、毎日新聞全国版朝刊一面、河北新報朝刊トップ記事(2010年3月11 日付)、などで紹介されました。
図 モット絶縁体中のスピン流(スピン波)