東北大学 金属材料研究所の平田倫啓助教(仏グルノーブル国立科学研究センター 日本学術振興会海外特別研究員(当時))、Claude Berthier研究員、Denis Basko研究員、東京大学大学院工学系研究科の石川恭平大学院生(当時)、宮川和也助教、鹿野田一司教授、東京理科大学理工学部の田村雅史教授、そして名古屋大学理学研究科物質理学専攻の松野元樹大学院生、小林晃人准教授らの研究チームは、グラフェンよりも強く相互作用したディラック電子社会を内包する分子性結晶に着目し、電子のミクロな磁気的特性を評価するための核磁気共鳴測定と、相補的な理論計算を行いました。
詳細な実験とその解析の結果、強い電気的な反発によってディラック電子の速度が増大する効果に加え、電子のもつ小さな磁石(スピン)の一部が、磁場と反平行にそろおうとするフェリ磁性が生じることを、分子レベルのミクロなスケールで、実験・理論の両面から初めて明らかにしました。
この結果は、ディラック電子の集団が、従来知られているよりもずっと多彩な集団的挙動を示しうることを実験的に初めて示したものであり、今後、電気・磁気的相互作用をキーワードに、ディラック電子社会のさらなる多様性を探索していく上で、重要な知見を提供するものと考えられます。
本研究は、仏グルノーブル国立科学研究所、東京理科大学、名古屋大学と共同で行われ、2016年8月31日(日本時間)に英国科学誌 Nature Communications(電子版)で公開されました。詳細1: プレスリリース本文 [PDF:708KB]
詳細2: Nature Communications ウェブサイト [DOI:10.1038/NCOMMS12666]
左図:分子性結晶 α-(ET)2I3 におけるディラック電子の速度の増大。右図:分子性結晶 α-(ET)2I3 におけるフェリ磁性の模式図。