結晶物理学研究部門では、Si融液からのデンドライト結晶の成長メカニズムを、独自のIn situ成長過程観察装置を考案し、初めて解明しました。この成長メカニズムをベースに、従来制御できなかったSi多結晶インゴット・ウェハーの結晶粒方位、粒サイズ、粒界性格の制御が可能になり、独自の「デンドライト利用キャスト成長法」の精密制御技術の開発に結びつけることができました。この新結晶技術により、高効率太陽電池を開発するために不可欠である高品質・高均質Si 多結晶インゴット・ウェハーを得ることができ、今後の太陽電池の大規模な展開に大きな貢献ができると期待されています。 デンドライト結晶の主鎖部には、双晶ペアが存在することが知られていましたが、今回の成果では、これまで不明であった双晶ペアの形成メカニズムと双晶ペアとデンドライト結晶の相関成長メカニズムを明らかにしました。更に、デンドライト結晶の発現に必要な過冷却度を、独自のIn situ成長過程観察装置を利用した基礎研究により定量決定しました。 これらの知見は、デンドライト利用キャスト成長法による高品質・高均質Siバルク多結晶の作製に応用され、太陽電池メーカーとの共同研究において、小型のルツボを用いたにも関わらず、高品質の多結晶ウェハーに匹敵する高い変換効率を有する太陽電池(65mmx65mm)が実現できました。このため今後、ルツボの大型化をはかることにより、単結晶に近い品質の結晶にまで高品質化ができる可能性が示されました。 本成果は、ミラノで行われたEuropean Photovoltaic Solar Energy Conference(9/4)で発表され、日経マイクロデバイスオンラインニュース(9/6付け)で紹介されました。
{111}ファセットと平行に成長するデンドライト結晶。
(a) から (d) へと温度減少。
中嶋グループ (結晶物理学研究部門)