プレスリリース・研究成果

電子を操って原子核の半減期を大きく変える -「電子架橋遷移」の存在を示す重要な証拠を発見-

2026/04/15

概要 

理化学研究所(理研)仁科加速器科学研究センター核化学研究開発室の重河優大特別研究員(研究当時、現客員研究員、筑波大学数理物質系助教)、羽場宏光室長、光量子工学研究センター時空間エンジニアリング研究チームの山口敦史専任研究員、大阪大学大学院理学研究科の笠松良崇教授、東北大学先端量子ビーム科学研究センターの菊永英寿准教授、同金属材料研究所の白崎謙次講師(研究当時)、高エネルギー加速器研究機構素粒子原子核研究所の和田道治名誉教授らの共同研究グループは、原子核の周りにある電子の数を変えて、励起状態のトリウム229原子核の半減期を大きく変化させることに成功しました。

本研究成果は、未発見の核壊変過程(励起状態から基底状態へ脱励起する過程)である「電子架橋遷移」の直接観測に向けた大きな一歩となり、原子核時計の実現に向けた貢献も期待されます。

励起状態のトリウム229原子核は、通常の原子核の1,000分の1以下である8.4電子ボルト(eV)という低い励起エネルギーを持ちます。8.4eVは、トリウム原子の最も外側の軌道にある電子(価電子)の結合エネルギーと同程度です。そのため、価電子の数が変わると、励起状態のトリウム229原子核の壊変過程が変化すると考えられてきました。壊変過程として、光子を放出するγ(ガンマ)線放出[5]や電子を放出する内部転換[6]が知られています。これらは多くの原子核で観測されている壊変過程ですが、トリウム229原子核の場合には、原子核のエネルギーを電子の遷移と光子に変換する電子架橋遷移という新しい過程の存在が予想されてきました。今回、共同研究グループは、中性のトリウム原子から電子を1個取り除いた1価イオンの状態で、励起状態のトリウム229原子核の半減期を測定しました。得られた半減期の値は0.46±0.08秒で、中性のトリウム原子(内部転換で壊変)の10万分の1秒程度や3価のトリウムイオン(γ線放出で壊変)の1,400秒程度という半減期の値と大きく異なっており、電子架橋遷移の存在を強く示唆する結果となりました。

本研究は、科学雑誌『Nature Physics』オンライン版(4月14日付:日本時間4月14日)に掲載されました。

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