研究成果のポイント
- 新種の磁石の候補とされる有機系結晶の光学特性から磁気的性質とその起源を明らかにしました。これにより、一般に弱い磁性しか示さない有機系物質においても、高機能な磁気デバイスの実現が期待されます。
- 有機磁性体(磁石)の光学特性を測定するために、磁性体に限らずあらゆる物質に適用可能な光の反射に関する簡潔な一般公式を厳密に導出し、それに基づく測定法を開発しました。これは従来極めて複雑だったあらゆる物質における光学特性を計測する新しい手法の開拓にも繋がります。
概要
磁石に光を当てると、その光はどうなるでしょうか。もちろんどんな磁石でも光は反射します。そして、反射光から磁石の性質を知ることができます。では、どんな磁石からの反射光でもその性質を知ることができるかというと、これまではそうではありませんでした。
近年見つかった「くっつかない」タイプの磁石がまさにそれに該当し、その解明には学術と応用の両面からの期待が高い一方で、その性質を光で調べるためには大きな壁がありました。
東北大学金属材料研究所の井口敏 准教授、高輝度光科学研究センターの池本夕佳 主幹研究員、森脇太郎 主幹研究員、関西学院大学理学部物理・宇宙学科の伊藤弘毅 教授、東北大学理学研究科物理学専攻の岩井伸一郎 教授、東北大学金属材料研究所の古川哲也 助教、佐々木孝彦 教授からなる研究グループは、新種の磁石の候補とされる有機結晶に、新たに求めた光に関する一般公式を適用し、その磁気的性質と起源を解明しました。
本研究成果は、2025年7月7日(現地時間)に アメリカ物理学会が発行する学術誌 Physical Review Researchに掲載されました。
詳細
- プレスリリース本文 [PDF: 856 MB]
- Physical Review Research [DOI: https://doi.org/10.1103/nnz3-tq7y]

図1. 左から順に、有機結晶を横から見た構造、上から見た分子配列と矢印で描いたミクロな磁石 (この結晶では2分子がペアになっているので丸で囲んでいます)、対角と非対角の光学伝導度スペクトル。