発表のポイント
- 磁石の性質を示す窒化鉄(Fe4N)の薄膜が、磁化することで結晶がひずむ大きな磁気ひずみを示すことを実証しました。
- 鉄の一部をコバルト(Co)で置き換えた(Fe,Co)4N薄膜ではCo置換量に依存して磁気ひずみの符号が反転するほど磁気ひずみを大きく変調できることを発見し、実験および理論の両面から磁気ひずみのメカニズムを明らかにしました。
- 窒化鉄は電子の電気と磁気の両方を活用できるスピントロニクス機能を示すことが知られており、今回発見した磁気ひずみの特性と合わせて活用することで、ひずみセンシングなどを行うこれまでに無いフレキシブルスピントロニクス素子の新材料として期待できます。
概要
身につけられる柔軟なエレクロニクス素子に磁石の特性を融合させるフレキシブルスピントロニクスは、ひずみセンサシートなどを実現できる分野として期待を集めています。しかし、センサの高感度化に向けては、大きな磁気抵抗効果(磁石の向きによって電気抵抗が変化する効果)などのスピントロニクス機能と同時に、ひずみに対して磁石の向きが敏感に変化する「磁気ひずみが大きな材料」を探し出すことが切望されていました。
今回、東北大学金属材料研究所の伊藤啓太助教と関剛斎教授は、同研究所の嶋田雄介助教(研究当時、現:九州大学准教授)、大学院工学研究科の遠藤恭教授、物質・材料研究機構 磁性・スピントロニクス材料研究センターのIvan Kurniawan博士研究員、三浦良雄グループリーダー(研究当時、現:京都工芸繊維大学教授)と共同で、Fe4N薄膜が大きな磁気ひずみを示すこと、Feの一部をCoで置き換えることで磁気ひずみの符号が反転するほど磁気ひずみを大きく変調できること、さらに実験結果と理論計算を比較することで大きな磁気ひずみが得られるメカニズムを解明しました。今回の成果は大きな磁気ひずみ特性を有するスピントロニクス材料の開発を加速し、将来のフレキシブルスピントロニクス素子の高感度化に大きく寄与すると期待されます。
本研究成果は、2025年3月26日付で材料科学分野の専門誌Communications Materialsにオンライン掲載されました。
詳細
- プレスリリース本文 [PDF: 509KB]
- Communications Materials [DOI: 10.1038/s43246-025-00784-5]