東北大学金属材料研究所 佐々木孝彦教授、古川哲也助教の研究グループは、東京大学大学院工学系研究科 鹿野田一司教授、 松本充功 大学院生(当時)、宮川和也助教らと共に、有機超伝導体における擬ギャップ現象の起源を核磁気共鳴実験により明らかにしました。
超伝導体における擬ギャップ現象とは、超伝導転移温度よりも高温から電子の自由度が異常に減少していく振る舞いのことで、銅酸化物高温超伝導体をはじめ多くの超伝導体でその存在が観測されているものの、その起源については決着がついていませんでした。
本研究では、強く相互作用する電子が物性を担う擬二次元有機超伝導体κ-(ET)2Xにおいて、その擬ギャップ挙動の圧力、磁場依存性を核磁気共鳴実験により詳細に測定、考察しました。その結果、この有機超伝導体における擬ギャップの起源が 、モット転移と呼ばれる金属絶縁体転移の近傍において顕著になる、クーパー対の前駆形成に由来することを明らかにしました。今回の成果は有機超伝導体の理解にとどまらず、銅酸化物高温超伝導体をはじめとする他の強く相互作用する電子系における超伝導現象の解明にも重要な示唆を与えるものです。
本研究は、科学雑誌『Physical Review Research』(オンライン、オープンアクセス)(6月15日付)に掲載されました。
詳細
- Physical Review Research [DOI: 10.1103/PhysRevResearch.5.023165]
図. 温度圧力相図上におけるクーパー対前駆形成領域の概念図