発表のポイント
- 物質内部の軽元素が示す化学状態を非破壊かつ高分解能で観察可能なテンダーX線タイコグラフィ計測システムを確立。
- 含硫黄高分子粒子内部の不均一な硫黄化学状態の可視化に成功。
- 現状のリチウムイオン電池より様々な点で優れるリチウム硫黄電池の反応・劣化メカニズムの解明による性能向上への貢献に期待。
概要
硫黄やリンなどの軽元素は、電池材料や生体が機能を発現する際に重要な役割を果たすことが知られています。それらの軽元素が機能発現にどのように関与しているかを正しく理解するためには、物質中での分布や化学状態を非破壊かつ高分解能で観察できる計測手法が必要です。
東北大学国際放射光イノベーション・スマート研究センターの高橋幸生教授(理化学研究所放射光科学研究センター チームリーダー)と石黒志助教(理化学研究所放射光科学研究センター 客員研究員)、東北大学大学院工学研究科の阿部真樹大学院生(理化学研究所放射光科学研究センター 研修生)、住友ゴム工業株式会社の金子房恵博士(東北大学 多元物質科学研究所 助教)と岸本浩通博士、理化学研究所放射光科学研究センターの初井宇記チームリーダー、高輝度光科学研究センターの為則雄祐室長らの共同研究グループは、SOPHIAS検出器の新規開発等を通じて、干渉性(コヒーレンス)に優れたX線を用いて物質の微細構造と化学状態を高分解能で観察する「X線タイコグラフィ」の計測を硫黄やリンなどのK吸収端が含まれるテンダーX線のエネルギー領域で実施可能なシステムを大型放射光施設「SPring-8」において初めて確立し、50ナノメートル(nm, 1 nmは10億分の1メートル)程度の空間分解能を達成してきました。そして、今回、リチウム硫黄電池正極材として開発された含硫黄高分子粒子の内部における不均一な硫黄化学状態を非破壊で可視化することに成功しました。
今後、本システムを動作中のリチウム硫黄電池の計測に応用することで、これまで不明瞭だった正極の反応・劣化メカニズムの解明および電池性能向上への貢献が期待できます。
本研究成果は、現地時間の8月11日に米国化学会の物理化学専門誌「The Journal of Physical Chemistry C」のオンライン速報版に掲載されました。
東北大学国際放射光イノベーション・スマート研究センターの高橋幸生教授(理化学研究所放射光科学研究センター チームリーダー)と石黒志助教(理化学研究所放射光科学研究センター 客員研究員)、東北大学大学院工学研究科の阿部真樹大学院生(理化学研究所放射光科学研究センター 研修生)、住友ゴム工業株式会社の金子房恵博士(東北大学 多元物質科学研究所 助教)と岸本浩通博士、理化学研究所放射光科学研究センターの初井宇記チームリーダー、高輝度光科学研究センターの為則雄祐室長らの共同研究グループは、SOPHIAS検出器の新規開発等を通じて、干渉性(コヒーレンス)に優れたX線を用いて物質の微細構造と化学状態を高分解能で観察する「X線タイコグラフィ」の計測を硫黄やリンなどのK吸収端が含まれるテンダーX線のエネルギー領域で実施可能なシステムを大型放射光施設「SPring-8」において初めて確立し、50ナノメートル(nm, 1 nmは10億分の1メートル)程度の空間分解能を達成してきました。そして、今回、リチウム硫黄電池正極材として開発された含硫黄高分子粒子の内部における不均一な硫黄化学状態を非破壊で可視化することに成功しました。
今後、本システムを動作中のリチウム硫黄電池の計測に応用することで、これまで不明瞭だった正極の反応・劣化メカニズムの解明および電池性能向上への貢献が期待できます。
本研究成果は、現地時間の8月11日に米国化学会の物理化学専門誌「The Journal of Physical Chemistry C」のオンライン速報版に掲載されました。
詳細
- プレスリリース本文 [PDF: 1.07MB]
- The Journal of Physical Chemistry C [DOI: 10.1021/acs.jpcc.2c02795]