発表のポイント
- 現在最も大きなバルク(塊)状を形成できる金属ガラスPd42.5Ni7.5Cu30P20の原子の並び方に、ガラスになりやすい不均質性を示す多くの特徴を見出しました。
- 実験はフランスにある放射光施設や中性子源を用いて、日仏独英の共同で行いました。
- 得られた実験結果の解析は、日本とハンガリーで開発した最新のアルゴリズムを用いました。
概要
東北大学金属材料研究所は、熊本大学の細川伸也特任教授およびラスロー・プスタイ卓越教授(ハンガリー科学院より併任)、フランス・国立科学研究センター(CNRS)、ドイツ・マールブルク大学、高輝度光科学研究センター(JASRI)、物質・材料研究機構(NIMS)、フランス・ラウエ・ランジュバン研究所(ILL)およびイギリス・バース大学の研究者と協力して、放射光X線を利用したX線異常散乱実験および強力中性子源を用いた中性子回折実験を行うことにより、現在8cmを超える最も大きなバルク状を形成することができるパラジウム(Pd)・ニッケル(Ni)・銅(Cu)・リン(P)系金属ガラスPd42.5Ni7.5Cu30P20(PNCP)の原子の並び方の特徴を捉えることに成功しました。これには、逆モンテ・カルロ法、ボロノイ解析およびパーシステント・ホモロジー法などの最近のデータ解析に用いるさまざまな手法が利用されています。
この研究により、なぜ金属原子が結晶として整列せず、ランダムに並ぶガラスとなり得るのかという、これまであいまいであった特徴をあぶり出すことができました。また、この研究成果は、これまで経験的にしか語られることがなかった、ガラス形成能(ガラスになりやすさ)に一定の指針を与えることができ、今後の金属ガラス材料の新規材料開発に新たな指針を与えるものとして期待されます。
本研究は文部科学省科学研究費補助金・学術変革領域研究(A)「超秩序構造科学」および基盤研究(C)、科学技術振興機構CREST、東北大学金属材料研究所全国共同利用共同研究の支援を受けて実施されたもので、オランダの科学出版大手エルゼビアの非晶質固体専門誌「Journal of Non-Crystalline Solids」に令和4年8月25日に掲載されました。詳細
- プレスリリース本文 [PDF: 784KB]
- Journal of Non-Crystalline Solids [DOI: https://doi.org/10.1016/j.jnoncrysol.2022.121868]