発表のポイント
- 骨との高い力学的親和性を有する新規CoCr(コバルトクロム)系生体用金属材料の開発に成功
- 骨に匹敵する柔らかさ(低ヤング率)と、高い耐摩耗性・耐食性を両立させたバランスの優れた生体材料で、インプラントによる骨萎縮の解決が期待
- 既存実用超弾性合金の2倍を越える17%の超弾性ひずみを持つことからステントなどへの応用も期待
- 1.65%の大きな変形に対して1000万回以上の疲労寿命を実現
概要
超高齢社会の進行に伴って、骨や関節の疾患治療のためのインプラントの需要が高まっており、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)を向上させるためには、より優れた生体材料の開発が求められています。東北大学大学院工学研究科博士後期課程の大平拓実氏(研究当時)、許皛助教らの研究グループは、東北大学金属材料研究所、日本原子力研究開発機構、J‐PARCセンター、チェコ科学アカデミーとの共同研究により、今まで実現できなかった、骨との高い力学的親和性と耐摩耗性を両立させたCoCr系生体用金属材料を開発しました(図1)。さらに、本合金は優れた超弾性特性を示すことから、多機能性生体用金属材料として有望です。
特に低いヤング率、高い耐食性と耐摩耗性および優れた超弾性特性の4拍子そろった本CoCr系生体材料は、人工関節、ボーンプレート、脊髄固定器具やステントなどへの応用が期待されます。
本成果は、2022年5月9日付のドイツ科学誌Advanced Materialsに掲載されました。
詳細
- プレスリリース本文 [PDF: 835KB]
- Advanced Materials [DOI: 10.1002/adma.202202305]