発表のポイント
- 電子の自転運動であるスピンの流れ(スピン流)を磁性体に注入することで磁性体の体積を変調可能であることを実証した。
- スピン流由来の体積変化が磁性体中のスピンのゆらぎの変化に起因していることを明らかにした。
- 電子素子の省電力制御技術として期待されるスピン流が、力学素子制御技術としても応用できる可能性を示した。
概要
東北大学金属材料研究所の有沢 洋希 大学院生(研究当時:東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻特別研究学生)と、東京大学大学院工学系研究科の齊藤 英治 教授(東北大学材料科学高等研究所主任研究者兼任)らを中心とする研究グループは、東北大学大学院工学研究科の小野 崇人 教授、Hang Shim大学院生(研究当時)らと共同で、スピン流を用いて強磁性体の体積を変調できることを実証しました。
電子の自転運動であるスピンの流れをスピン流と呼びます。スピン流は電荷の流れである電流と対比され、電流では不可能だった省電力情報処理を実現する可能性があることから、スピントロニクス分野(注2)において次世代の電子素子制御技術として期待されています。本研究では、スピン流により強磁性体中のスピンゆらぎを制御し、強磁性体の体積が変化することを見出しました。これは近年微小化が進む精密機器において課題となる、熱による部品変形をスピン流で制御できることを示唆しており、新たな材料開発を推進する可能性があります。
本研究成果は、2022年5月11日(英国夏時間)に英国科学雑誌「Nature Communications」のオンライン版に掲載されました。
詳細
- プレスリリース本文 [PDF: 412KB]
- Nature Communications [DOI: 10.1038/s41467-022-30115-y]
図1:磁気体積効果とスピン流体積効果の模式図