発表のポイント
- 昇温下での電気化学的Mgイオン挿入により、拡散律速により室温では明瞭に見えなかったMnO2多形の相変態挙動を新たに浮き彫りにしました。
- Mgイオンの挿入・脱離を許容しつつも、構造的頑強さを維持するいくつかの構造体を発見しました。
- 第一原理計算の援用により、構造不安定ではあるが理想的なトポタクティック挿入が可能と予想される構造体を同定しました。
- MnO2をベースとする活物質を正極とするマグネシウム蓄電池の開発加速が期待されます。
概要
二酸化マンガン(MnO2)はアルカリ乾電池やリチウム電池の正極に用いられる身近な材料です。MnO2の結晶構造には、電池材料として広く使われてきたγ型以外にも、結晶多形と呼ばれるα、β、δ、λ型など、同組成の異なる構造が存在します。
東北大学金属材料研究所の畠山拓也氏(東北大学大学院工学研究科 博士課程学生)および市坪哲教授らの研究グループは、ヘルムホルツ研究所ウルム・カールスルーエ工科大学のMaximilian Fichtner教授との共同研究により、拡散律速のために室温では十分に見られなかった反応を、中温域での電気化学反応により浮き彫りにしました。そして、いくつかのMnO2の多形構造は、マグネシウムイオンの挿入が可能であり、挿入後も母構造を堅持できる(トポタクティック反応)という、MnO2の新たな側面を発見しました。この発見により、MnO2をベースとする活物質を正極とするマグネシウム蓄電池の開発が加速するものと期待されます。
本成果は2021年8月18日に、Chemistry of Materials誌にオンラインで公開されました。
詳細
- プレスリリース本文 [PDF: 688KB]
- Chemistry of Materials [DOI: 10.1021/acs.chemmater.1c02011]