発表のポイント
- Co3Sn2S2薄膜の磁性ワイル半金属状態における金属的表面伝導を実証しました。
- 汎用的かつ信頼性の高い膜厚制御に基づく表面伝導評価を確立しました。
- 表面伝導を用いた新型素子原理の検証につながる本成果は素子化研究へのブレークスルーとなります。
研究概要
トポロジカル物質群と呼ばれる特殊な物質の一種である磁性ワイル半金属については、強磁性であると同時に、トポロジカルな電子構造に由来する様々な興味深い物性の発現が提唱されています。磁性ワイル半金属の試料表面には、特異な電子構造に起因する表面状態が生じています。そのため、表面状態の特性は試料厚みに依存せず、優れた電気伝導を示すことが期待されています(図1)。しかしながら、表面状態と試料内部の伝導成分をそれぞれ分けて評価することは困難でした。
東北大学金属材料研究所の池田絢哉大学院生(研究当時、理学研究科物理学専攻)、藤原宏平准教授、塩貝純一助教、関剛斎准教授、野村健太郎准教授、高梨弘毅教授、塚﨑敦教授らの共同研究グループは、磁性ワイル半金属Co3Sn2S2薄膜の膜厚を精密に制御することで、磁性ワイル半金属状態における表面伝導の発現を初めて捉えるとともに、その金属的性質を明らかにしました。
この成果は、磁性ワイル半金属の物性解明を大きく前進させるだけでなく、表面伝導を活用した新型素子の開発にも寄与するものと期待されます。
本研究成果は、2021年6月3日10時(英国時間)に、英国科学誌「Communications Physics」オンライン版に掲載されました。
詳細
- プレスリリース本文 [PDF:667KB]
- Communications Physics [DOI: 10.1038/s42005-021-00627-y]
図1. 磁性ワイル半金属の表面伝導