発表のポイント
- 層状銅酸化物において長年の謎であった超伝導転移温度が高くなる原因の解明に光明を見出しました。
- 超伝導電子対の秩序変数が空間的に変調している対密度波状態の徴候を発見しました。
- 対密度波状態が電荷密度波の形成とともに誘起されることを示しました。
概要
近年になり室温超伝導体の発見がありましたが、大気圧下において最も高い超伝導転移温度を持つものは層状構造を持つ銅酸化物です。層状銅酸化物において、高い温度で超伝導状態になる原因は、これまで精力的な研究が行われてきましたが十分な答えは得られていませんでした。東北大学金属材料研究所とスタンフォード線形加速器国立研究所(SLAC)を中心とする国際チームは、層状銅酸化物における超伝導電子対が、超伝導転移温度近傍で特殊な空間変調を持つ状態を形成していることを実験的に明らかにし、長年の謎の解明に光明を見出しました。
本研究では、超伝導転移温度近傍の電子対の状態を明らかにするために、高品質な単結晶試料に対して高輝度共鳴軟X線散乱実験を行いました。その実験により、超伝導電子対の振幅が空間変調した状態である、対密度波状態の形成を示唆する結果を得ました。また対密度波状態は、電荷密度波の形成とともに徐々に誘起され、電荷密度波の相関長が、層内の格子間隔のおよそ8倍を超えた温度から出現することがわかりました。この結果により、対密度波状態と電荷密度波状態の関係が明らかとなり、超伝導転移温度が高くなる原因には、電荷の自由度が関わっていることがわかりました。
本研究内容は、2021年4月21日にPhysical Review Lettersにオンライン掲載されました。
詳細
- プレスリリース本文 [PDF: 683KB]
- Physical Review Letters [DOI: 10.1103/PhysRevLett.126.167001]