プレスリリース・研究成果

分子の吸着で磁石を創る 吸着分子に依存した磁気相変換の実現

2021/04/26

発表のポイント

  • 小分子の吸着により、磁石でない状態から磁石へと変換可能な多孔性材料の開発に成功しました。
  • 吸着させる化学種に応じて得られる磁石の性質(相転移温度・磁気秩序)が多様に変化することを明らかにしました。
  • 吸着化学種に依存して複数の磁気相間変換を実現する材料は世界初です。

概要  

 磁石本来の単なる性能向上にとどまらず、従来の磁性体では実現不可能であった機能を発現する磁石や、磁石のON/OFF機能を併せ持つ磁石の開発が注目されています。東北大学金属材料研究所の高坂亘助教、宮坂等教授と学際科学フロンティア研究所の張俊助教の研究グループは、株式会社リガクの佐藤寛泰博士との共同研究により、ベンゼンなどの小分子を吸着させることで、磁石でない状態から磁石へと変換する新たな多孔性材料の開発に成功しました。
 今回開発された材料は分子性多孔性材料の一種で、層状構造になっており、その層の間にベンゼンなどの小分子を出し入れできるのが特徴です。元々、この分子性多孔性材料は磁石としての性質を持ちません(常磁性状態)。しかし、ベンゼンやジクロロメタン、キシレンなどの有機小分子を吸着させるとフェリ磁性体になることを確認しました。逆に、吸着させた小分子を脱着させることにより元の常磁性体に戻ります。一方で、二硫化炭素を吸着させた場合には、反強磁性体という、ベンゼン等の場合とは異なる磁気秩序状態へと変わることも見出しました。本現象は、小分子が分子格子の構造変位を伴って包摂状態を安定化させることにより、分子格子の電子状態が包摂前後で変化することにより生じます。これまでに小分子の吸着により、磁石でないものを磁石へと変換した例はありません。このような材料は、化学的刺激により駆動する新たな分子デバイス創製に繋がると期待されます。本研究成果は、2021年4月14日付け(現地時間)で米オンライン科学誌「Journal of the American Chemical Society」にオンライン掲載されました。
 

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