発表のポイント
- 精密な微小機械システムにおける材料の摩耗量を予測可能な理論式を提案した。
- 通常サイズの機械システムに対する材料の摩耗量予測式が、微小な機械システムへは適用できない問題点を解決した。
- 本研究は、1秒間に3000兆回の高速計算が可能な東北大学金属材料研究所のスーパーコンピュータ「MASAMUNE-IMR」の活用成果である。
概要
ドローン、ロボット、自動車、医療機械などに利用される精密な微小機械システムでは、通常サイズの機械システムでは問題にならない極微少量の「摩耗」でもその精度と耐久性に大きなダメージを与えるため、極限までの摩耗量の低減が強く求められます。しかし、通常サイズの機械システムに対する従来の摩耗量の予測式を微小な機械システムには適用できないことが問題でした。
東北大学金属材料研究所の久保百司教授、王楊助教(現:東北大学大学院工学研究科)、東北大学大学院工学研究科の足立幸志教授、および中国上海海洋大学の許競翔副教授のグループは、東北大学金属材料研究所のスーパーコンピュータ「MASAMUNE-IMR」を活用し、微小機械システムの摩耗メカニズムを明らかにするとともに、その知見に基づき微小機械システムに対する摩耗量の予測式を世界で初めて提案しました。この新しい理論式は、微小機械システムの長寿命化に加え、故障・事故の防止を実現する信頼性向上に貢献しうる成果です。
この成果は、令和2年12月7日にAdvanced Scienceに掲載されました。
この成果は、令和2年12月7日にAdvanced Scienceに掲載されました。
詳細
- プレスリリース本文 [PDF: 428KB]
- Advanced Science [DOI: 10.1002/advs.202002827]
ダイヤモンドライクカーボンの摩耗量の荷重依存性を、摩耗量予測式(青線)と分子動力学シミュレーション(黒四角形)を用いて求めた結果の比較。
左図は粗い平板同士の摩擦過程、右図はボールオンディスクの摩擦過程の結果を示し、粗い平板同士の摩耗量が示す線形の荷重依存性とボールオンディスクの摩耗量が示す非線形の荷重依存性の両方について、本研究で提案した摩耗量予測式の結果は、分子動力学シミュレーションの結果を的確に再現している。
左図は粗い平板同士の摩擦過程、右図はボールオンディスクの摩擦過程の結果を示し、粗い平板同士の摩耗量が示す線形の荷重依存性とボールオンディスクの摩耗量が示す非線形の荷重依存性の両方について、本研究で提案した摩耗量予測式の結果は、分子動力学シミュレーションの結果を的確に再現している。