発表のポイント
- 次世代スピントロニクスではスピン流の生成・制御が重要ですが、ミクロな視点での理解は進んでいませんでした。
- 絶縁性磁性体のスピン流を伝搬する、電子スピン歳差運動の回転方向の直接観測に初めて成功しました。
- 今回用いた特殊な偏極中性子散乱はスピントロニクスに限らず磁性体一般に広く応用でき、今後マグノン極性を活かしたデバイスの開発が期待されます。
概要
スピントロニクスではスピン自由度の流れ、つまりスピン流の生成・制御が重要な要素です。これまでは、生成されたスピン流を電圧の情報に変換して巨視的に観測するのが一般的で、ミクロな視点での理解は進んでいませんでした。特に、絶縁性の高い磁性体においては、電子スピンの歳差運動(スピンが円を描くように向きを変える運動)によってスピン流が伝搬されることが知られていましたが、その歳差運動を顕わに観測した例はありませんでした。東北大学金属材料研究所の南部雄亮准教授らは、この歳差運動の回転方向(マグノン極性)を、中性子スピンの偏極を揃えた偏極中性子散乱によって初めて実験的に観測することに成功しました。
今回検出されたマグノン極性は、スピントロニクス物質の機構解明や物質開発の設計指針に欠かせない微視的情報です。今後、マグノン極性を活かしたデバイスの開発が期待されます。
本研究成果は、アメリカ物理学会学術誌「Physical Review Letters」において、2020年7月6日付けオンライン版に公開されます。また、Editors’ Suggestionに選出されています。
詳細
- プレスリリース本文 [PDF:448KB]
- Physical Reveiw Letters [DOI:10.1103/PhysRevLett.125.027201]