プレスリリース・研究成果

コバルトと酸化マグネシウムからなる グラニュラー材料で熱電変換効率が変化 熱電変換デバイスの高効率化実現へ道筋

2020/04/27

発表のポイント

  • コバルト薄膜に酸化マグネシウムの粒子を分散させただけで、熱電変換効率の大幅な増加が可能になることを新発見した。
  • 本研究により身のまわりにあふれた元素の組み合わせを用いた同じグラニュラー構造で同様の特性を持つ材料が作れることが示唆された。
  • 磁石を用いた熱電変換デバイスの開発に応用することで、熱電変換効率を自在にかつ効率よく制御することが可能になる。

概要

 東北大学金属材料研究所水口将輝准教授研究グループは、高知工科大学藤田武志教授らグループとの共同研究によって、Cox(MgO)₁₋ₓグラニュラー薄膜において、磁場中の熱電変換効果の一つである「異常ネルンスト効果」と呼ばれる熱磁気効果の大きさが、MgOの組成量に応じて大きく変化することを発見しました。

 本研究で熱電変換素子への応用に用いた異常ネルンスト効果は、古くから知られた現象ですが、変換効率が低いことから発電への応用などにはあまり活用されてきませんでした。熱流の方向と電力を取り出すための電極の方向が垂直関係にある異常ネルンスト効果は電力の取り出しが熱勾配に影響されないことから、理想的な熱電変換技術といえるため、風力や太陽光など身の回りのエネルギーを利用する環境発電の分野などで注目を集めています。熱磁気効果をもつ磁性体を効率的に発電に利用するためには、材料に内在するナノ構造を制御することにより、その変換効率を向上する技術が必要であることが提案されていますが、その開発はあまり進んでいませんでした。そこで研究グループは、コバルト (Co) 薄膜に絶縁体である酸化マグネシウム (MgO) のナノメートルサイズの微粒子を分散させたグラニュラー薄膜材料に着目しました。研究グループでは、MgOの添加量を様々に変えて高品位なグラニュラー薄膜を作製し、熱から電圧への変換効率がMgOの添加量に依存して大きく増加することを発見しました。

 今回作製したグラニュラー薄膜材料を用いれば、例えば絶縁体の添加量を適切に選択するだけで、熱電効率を自由に制御することができます。これにより、発電素子を設計する際、材料選択による自由度が生まれ、より効率的な熱電素子の開発、環境発電技術への幅広い応用が想定されます。また、これまであまり熱電変換素子などに活用されてこなかったグラニュラー薄膜ですが、その材料選択性の大きさや、材料作製の容易さから、新しい研究対象の材料としても期待されます。

 本成果はApplied Physics Lettersに2020年4月7日付けで公開されました。

詳細

図 2  透過電子顕微鏡によるCox(MgO)1-xグラニュラー薄膜の構造観察結果