プレスリリース・研究成果

【世界初】ハイエントロピー合金のナノポーラス化に成功 金属に多機能性をもたらす2つの技術の複合効果を利用し、新しい材料分野を開拓

2019/12/19

発表のポイント

  • 技術的に難しいとされていたハイエントロピー合金のナノポーラス化に世界で初めて成功。
  • ハイエントロピー合金は、従来の合金を凌ぐ優れた低・高温機械的特性を持つなど、その新規性が近年注目されており、これに無数の開気孔(ポーラス)を導入することでさらなる多機能化を実現。
  • 本技術を利用した大容量電解コンデンサや、その高い形態安定性を利用した超長寿命触媒等への応用が期待される。

概要

 東北大学金属材料研究所のジュウ・スゥヒュン助教、加藤秀実教授らの研究グループは、チタン(Ti) 、バナジウム(V) 、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)の5成分元素から成る体心立方格子系ハイエントロピー合金のナノポーラス化に世界で初めて成功しました。

 ハイエントロピー合金は、従来の合金を凌ぐ優れた低・高温機械的特性を持つなど、その新規性が近年注目されています。また、ナノポーラス化は,金属に無数の開気孔(ポーラス)を導入することで比表面積を広げ、金属に新たな機能性をもたらす技術で、触媒や電極、ナノメカニクス材料などに使用されています。当研究室はナノポーラス化に関する独自の技術(金属溶湯脱成分法)を持ち、様々な物質のナノポーラス化を通して新機能性材料の開発を進めています。

 本研究では、ナノポーラス化が難しいとされていたハイエントロピー合金のナノポーラス化に世界で初めて成功。金属に多機能性をもたらす2つの技術の複合効果を用いて新しい材料分野を開拓した点でも大変意義がある成果です。本合金は、従来のポーラス合金と比較すると開気孔のサイズが一桁ほど小さく(平均7 nm)、それに伴い広大な比表面積(56 m2/g)を持つことが大きな特徴です。さらにこのポーラス状態は極めて安定して維持されることもわかりました。

 さらに今回開発した合金は多くの弁金属元素を含有することから、これを利用した大容量電解コンデンサや、その高い形態安定性を利用した超長寿命触媒等への応用が期待されます。成果の詳細は、Advanced Materials (独Wiley-VCH出版社)に2019年12月4日付けで掲載されました。

詳細

 

図1: 600℃、10分間の脱成分処理によって作製した体心立方格子系ナノポーラス・ハイエントロピー合金の電子顕微鏡像(挿入図は電子線回折図形)と、チタン、バナジウム、ニオブ、モリブデンおよびタンタルの成分分布を表す元素マッピング像