発表のポイント
- 銅酸化物高温超伝導体で電荷秩序の共通の性質が精力的に研究されている。
- 超伝導と競合するタイプと、共存するタイプの2種類の電荷秩序を初めて発見。
- ストライプ相と超伝導相がミクロな状態で相分離していることを明らかにした。
概要
国立大学法人東北大学金属材料研究所とスタンフォード線形加速器国立研究所を中心とする国際研究チームは、銅酸化物高温超伝導体において異なった性質を持つ2種類の電荷秩序が存在することを世界で初めて明らかにしました。
銅酸化物において高温で発現する超伝導のメカニズム解明は物性物理学でも重要な課題の一つです。超伝導相の近傍には、多様な秩序相が存在しており、この秩序相と超伝導相との関係を明らかにすることが、超伝導機構解明の重要な手がかりになります。
近年、様々な銅酸化物高温超伝導体で電荷秩序が観測され、超伝導と電荷秩序の関係が活発に議論されています。本研究では、性能を向上させた共鳴軟X散乱実験※1を行い、ホールドープ型銅酸化物高温超伝導体※2La2-xSrxCuO4における電荷密度波※3の性質を、ホール濃度を制御した複数の試料で調べました。その結果、超伝導と共存するタイプと、競合するタイプの2種類の電荷秩序が、ホール濃度の異なる領域に存在する事を初めて明らかにしました。超伝導と共存する電荷秩序は、電荷とともにスピンがストライプ状の縞模様を形成しており、そのストライプ相と超伝導がミクロな状態で相分離していることが明らかとなりました。今後本研究のさらなる発展により、超伝導発現の鍵となる電荷相関の解明が期待されます。
本研究成果は、2019年7月22日に「Nature Communications」にオンライン掲載されました。
詳細1: プレスリリース本文 [PDF:748KB]
詳細2: Nature Communications ウェブサイト [DOI:10.1038/s41467-019-11167-z]
図: La2-xSrxCuO4の超伝導相図。Twは、X線散乱により決定した電荷密度波(CDW)の転移温度で、×印はCDWが観測されなかった組成を示しています。Tsdwは、これまでに中性子散乱により決定されたスピン密度波(SDW)の転移温度で、TcとT*は、それぞれ超伝導と擬ギャップの転移温度に対応しています。0.10 < x < 0.18の超伝導組成領域において、電荷密度波の短距離秩序相(CDW-SRO)とストライプ相(Stripe)が存在していることがわかります。