プレスリリース・研究成果

流動中の磁気スキルミオン格子の変形挙動観測に成功

2019/07/12

発表のポイント

  • カイラル磁性体MnSiで形成される磁気スキルミオンが、電流下の流動状態においても格子構造を保つことを確認した
  • 流動状態においては磁気スキルミオン格子が塑性変形することを観測した
  • 塑性変形の形状から試料端における摩擦力の存在が示唆される
  • 本研究で解明された磁気スキルミオンの電流下の流動挙動は磁気スキルミオンを用いた省エネルギーデバイス実現に貢献するものと期待される

概要

 東北大学金属材料研究所の南部雄亮准教授、東北大学多元物質科学研究所の奥山大輔助教、佐藤卓教授、アメリカ国立標準技術研究所(NIST)のBleuel Markus研究員、スイスパウル・シェラー研究所(PSI)のWhite Jonathan研究員、スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)のRonnow Henrik准教授、理化学研究所創発物性科学研究センターの田口康二郎グループディレクター、十倉好紀センター長、東京大学の永長直人教授の研究グループは、カイラル磁性体MnSiに形成される磁気スキルミオンの電流下の流動挙動を中性子小角散乱によって詳細に調べました。その結果、磁気スキルミオンは駆動中も格子構造を保つこと、さらに試料端付近に生じる摩擦力的な機構により塑性変形を起こすことが観測されました。今回解明された電流下の流動挙動は従来の予想とは本質的に異なるものであり、磁気スキルミオンを用いた省エネルギー情報伝達デバイス実現のために重要な情報であると考えられます。

 本研究成果は、2019年7月11日(日本時間18時)「Communications Physics」オンライン版に掲載される予定です。

 詳細1: プレスリリース本文 [PDF:629KB]

 詳細2: Communications Physics ウェブサイト [DOI:10.1038/s42005-019-0175-z]

 

図. 中性子小角散乱で観測された磁気スキルミオンからの磁気回折線。磁気スキルミオンが形成する三角格子を反映し、6回対称の反射が観測されている。