発表のポイント
- 室温で作製した鉄スズ磁石の微結晶薄膜が磁場を電気的に検出するホール素子として利用可能であることを実証
- 従来作製が困難であった形状を変えられるフレキシブルセンサーにも応用可能
- 今後、磁石の性質を活用した新型磁気センサー開発の進展が期待
東北大学金属材料研究所の藤原宏平准教授、佐竹遥介大学院生、塩貝純一助教、関剛斎准教授、塚﨑敦教授らの研究グループは、鉄とスズから成る合金系磁石の薄膜を作製し、形状を変えられるフレキシブルな磁気センサー(ホール素子)として利用可能であることを実証しました。
各種エレクトロニクス分野において、磁場を電気的に検出することのできる磁気センサーの需要が高まっています。磁気センサーは、半導体ホール素子が一般的ですが、近年、磁石の性質を活用するホール素子にも注目が集まっています。この新型素子は、半導体素子の弱点を補う反面、磁場を電気信号に変換する性能が低いという欠点がありました。
研究グループでは、この欠点を克服した新型素子を開発すべく、鉄スズ合金に着目して薄膜を作製、結果、広い温度・磁場範囲で優れたセンサー特性が得られることを明らかにしました。この薄膜は産業でも広く用いられている薄膜合成手法(スパッタリング法)によって容易に作製でき、さらに室温での素子作製が可能です。これにより、薄膜の土台を高分子基板(自在に変形できるが、熱に弱い)にしても素子を搭載でき、実際に素子を「曲げた状態」でもセンサーが正常に動作することを実証しました。
本成果により、関連する金属系磁石薄膜を用いた磁気センサー開発が前進するとともに、従来の半導体素子とは異なる磁石の特性を活用した新たな応用研究が今後加速するものと期待されます。本研究成果は、2019年3月1日で「Scientific Reports」にオンライン掲載されました。
詳細1: プレスリリース本文 [PDF:351KB]
詳細2: Scientific Reports ウェブサイト [10.1038/s41598-019-39817-8]