発表のポイント
- 磁力が微弱でも磁気を保持する力が強いナノ薄膜磁石の開発に成功。
- ナノ薄膜磁石を用いた素子の基本特性を室温で観測することに成功。
- 超高集積不揮発性磁気メモリを実現するための材料開発に新しい視点。
概要
木村尚次郎准教授(東北大学金属材料研究所附属強磁場超伝導材料研究センター)、鈴木和也助教と水上成美教授(東北大学材料科学高等研究所(AIMR))ならびに久保田均総括研究主幹(産業技術総合研究所スピントロニクス研究センター)は、新しいナノ薄膜磁石の開発に成功しました。超高集積不揮発性磁気メモリを実現するための材料開発に新しい視点を与えるものです。ナノ薄膜磁石を用いた素子の磁極の向きをビット情報とする不揮発性磁気メモリは、システム・オン・チップ等への応用が進んでおり、人工知能技術への展開も見据えて世界的な規模で研究開発が展開されています。本研究グループでは、通常磁気を示さない金属を特殊な金属と絶縁体で挟み込んだ新しい界面構造を研究し、その結果、磁気を保持する力が強くかつ磁力の微弱なナノ薄膜磁石の開発に成功しました。またそれを組み込んだ素子の基本特性を室温で観測することにも成功しました。これは、メモリの超高集積化を進めるために重要なナノ薄膜磁石材料の開発に新しい視点を与える研究成果です。
本成果の詳細は、2018年12月6日(米国時間)に米国化学会の学術誌「ACS Applied Materials and Interface」でオンライン公開されました。本研究は、内閣府革新的研究開発プログラム(ImPACT)「無充電で長期間使用できる究極のエコIT機器の実現(佐橋政司PM)」等の支援により行われました。
詳細1: プレスリリース本文 [PDF: 666KB]
詳細2: ACS Applied Materials and Interface ウェブサイト [10.1021/acsami.8b15606]
(a)鉄に代表される強磁性体と呼ばれる物質の概念図。スピン(矢印)が物質の中で平行に配列しており、強い磁気が磁力線を周囲の空間に発しているのが特徴です。(b)本研究に関わる反強磁性体と呼ばれる物質の概念図。スピンが反平行に配列しており、磁気が打ち消しあうため磁力がありません。