RESEARCH ACTIVITY

超伝導でととのう電荷秩序の「しま模様」 ― 銅酸化物超伝導体で「位相コヒーレンス」を強める新たな関係を発見 ―

発表のポイント

  • これまで銅酸化物高温超伝導体において、電荷密度波(CDW)と超伝導は互いに抑制し合う競合の関係にあると捉えられてきました。
  • 銅酸化物高温超伝導体の一種であるLa1.885Sr0.115CuO4の超伝導状態において、CDWの振幅(強さ)が抑えられる一方、揃い方(位相コヒーレンス)が強まるという現象を新たに見いだしました。
  • 本現象は長期保管で結晶構造に乱れが導入された試料や他の銅酸化物ファミリーの既報データとも共通して観察されたことから、銅酸化物に共通する本質的な性質であると考えられます。

概要 

 高温超伝導とCDWは長らく排他的な競合関係にあるとされてきましたが、波状に現れる両者の位相の関係は未解明でした。

 東北大学金属材料研究所の藤田全基教授、SLAC国立加速器研究所のJun-Sik Lee上級科学者を中心とする国際研究チームは、銅酸化物高温超伝導体において、超伝導がCDWの振幅や体積を抑える一方で、CDWの位相コヒーレンスを強めることを示しました。研究チームは銅酸化物高温超伝導体の一種であるLa1.885Sr0.115CuO4を対象に、共鳴軟X線散乱を用いてCDW散乱ピークの温度依存性を測定しました。その結果、Tc直上の27 Kから超伝導状態の12.4 Kに温度を下げると、積分強度は約15%低下する一方でピーク幅は約21%縮小しました。これは、超伝導によってCDWの「しま模様」がより広い範囲で規則正しく整列したこと(実空間相関長の増大)を意味します。従来の競合モデルでは説明できないこの現象に対し、研究チームは解析によりピーク幅を結晶中の乱れを示す位相コヒーレンスの成分に分けて評価しました。その結果、超伝導下でCDW強度が減少する一方、位相コヒーレンスが増大していることを突き止めました。今後、高温超伝導発現機構や、intertwined orderの理解が大きく進むことが期待されます。

 本成果は、2026年5月7日に学術誌Physical Review Lettersにオンライン掲載されました。

詳細

 

図1. (a)超伝導体のCuO2平面における電荷密度波(CDW)を示す模式図。薄い青色と濃い青色の陰影は、それぞれコヒーレンスの高いCDW相と低いCDW相を区別している。赤い矢印は、CDW相のコヒーレンスの変化を示しており、フォノン(緑色の振動)などの集団励起によって位相φの変化として引き起こされる可能性がある。
(b) 理想的なコヒーレント位相で周期性が約4の場合(左上)と、有限の位相変化φを伴うコヒーレント位相の低下の場合(左下)のシミュレーションによるCDWピークプロファイル(右)。