発表のポイント
- 高誘電体で重要となる誘電率のイオンによる寄与を、結晶構造から高精度に予測する新しいAI手法を開発しました。
- 具体的には、イオン寄与を物理式に則り構成要素に分解し、それぞれを異なる機械学習モデルで予測して再構築する「分解統合型AI」により、世界最高精度を達成しました。
- 開発したAIモデルを用いて、8,717 種類の酸化物を網羅的に探索し、31 種類の高誘電材料を新たに発見しました。それらのうち実験で誘電率が報告されている材料については、AI 予測値と実測値がいずれも高誘電率で一致し、モデルの信頼性を実証しました。
概要
物質の微視的構造が示す振る舞いを高精度に理解することは新規材料の創出や特性制御に不可欠ですが、その本質的理解には膨大な計算資源を要する量子力学計算が必要であり、大規模材料探索や迅速な設計の大きな障壁でした。
東北大学大学院工学研究科の滝川敦之大学院生、同大学金属材料研究所の清原慎講師、熊谷悠教授らのグループは、物質の原子配列情報のみから誘電率へのイオンの寄与を高精度に予測できるAI手法を開発しました。具体的には、物質の結晶構造をグラフとして表現し、グラフニューラルネットワーク(GNN)を用いてBorn有効電荷を予測するとともに、最新の機械学習ポテンシャルを活用してフォノン特性を算出し、それらを物理法則に基づく理論式により統合し、イオン寄与を求める新たな計算枠組みを構築しました。本手法により、従来は高精度な予測が困難であったイオン寄与を、量子力学計算と比べて大幅に少ない計算コストで高精度に予測できることを実証しました。さらに、本モデルにより数千種類の化合物を高速にスクリーニングし、LiBi4Nb3O14をはじめとする有望な新規材料候補群を抽出しました。本成果は、AIと物理理論を融合した次世代材料開発の基盤技術として重要な意義を持ち、材料探索の効率化と革新的材料の創出加速に貢献することが期待されます。
本研究成果は、2026年4月7日(現地時間)付で物理学分野の代表的な国際学術誌Physical Review Xにオンライン掲載されました。
詳細
- プレスリリース本文 [PDF: 512KB]
- Physical Review X [DOI: 10.1103/28wr-w896]

図1. (A)本研究において構築した機械学習を用いた予測手法の概略図。結晶構造の情報からBorn有効電荷とフォノン特性を個別の機械学習モデルで予測し、図に示す物理式を用いて誘電率のイオン寄与を再構築します。(B)928酸化物中のイオン寄与予測値で、横軸は量子力学計算による値を、縦軸は機械学習による予測値を示しています。R2は決定係数という予測精度を表す指標で、1に近いほど予測精度が高いことを示します。
