グリュンベルク博士は、1969年にドイツのダルムシュタット工科大学で博士課程を修了された後,カナダのカールトン大学でのポスドクを経て、1972年にドイツ,ユーリヒ研究センターの研究員になられました。長年にわたりスピン波をはじめとする磁性研究に取り組まれ、1988年に巨大磁気抵抗効果を発見されました。本発見は、ハードディスクの磁気ヘッドとして応用され、記録密度が飛躍的に向上し、ITの発展に大きく貢献しました。巨大磁気抵抗効果の発見は、次世代のエレクトロニクスとして大きな注目を集めているスピントロニクスの起源と考えられており、これらの功績により、2007年にノーベル物理学賞を受賞されました。
グリュンベルク先生の長年にわたる物理学研究の成果は、スピントロニクス研究の生みの親として多くの研究者に影響を与え、分野の発展に大きく貢献されました。
追悼:グリュンベルク先生
1994年から1995年の1年間、私はフンボルト客員研究員としてドイツ・ユーリヒ研究センターに滞在し、グリュンベルク先生とともに共同研究を行いました。グリュンベルク先生と同じ居室にいた私は、科学についてはもちろん、様々な話題について議論を交わし、大変楽しい時間を過ごしました。先生や彼のご家族は私の家族のことも気にかけ、よく面倒を見てくださいました。それ以来、グリュンベルク先生は私のよき友人、よき共同研究者であり、そして尊敬する師でもありました。
グリュンベルク先生が2007年にノーベル物理学賞を受賞した際には、ストックホルムでのノーベル賞授賞式典と晩餐会に私を招待してくださいました。私にとって大変光栄な出来事であり、この上ない幸せでした。
グリュンベルク先生は何度か東北大学の客員教授として招聘し、東北大学の研究と教育活動にも大きく貢献してくださいました。
この度の突然の訃報は、まことに残念でなりません。ご生前グリュンベルク先生からいただいた様々なご厚意に深く感謝するとともに、ご遺族の皆様には心よりお悔やみ申し上げます。グリュンベルク先生のご冥福をお祈り申し上げます。