私たちは、アクチノイド元素や希土類元素を含むf電子系化合物を中心に、新物質開発および新奇量子物性の開拓を行っています。これらの物性は、電子間の相関が強い強相関電子系の物理として知られています。比較的よく局在したf電子は、伝導電子と一体となって遍歴する性質も持ち合わせています。このため、通常の伝導電子に比べて100倍から1000倍も重い有効質量を持ち、重い電子系の物理と呼ばれています。アクチノイド化合物は、遍歴と局在の二重の性質が特に顕著で、さまざまな魅力的な物性が知られています。例えば、ネプツニウムやプルトニウムを含む化合物は、「高温」超伝導体や多極子が絡んだ複雑な秩序状態が知られています。私たちが発見したNpPd5Al2は世界初のネプツニウムを含む重い電子系超伝導体です。また、ウラン化合物における強磁性と超伝導の共存、多重超伝導は私たちの主要な研究テーマの一つです。スピン三重項超伝導という非従来型超伝導が実現しており、トポロジカル超伝導、マヨラナ粒子出現の舞台としても注目されています。
これらの物理を探究する上で、物質開発、純良単結晶育成は極めて重要です。私たちは、アクチノイド化合物の物質開発ができる世界でも稀な研究グループの一つです。試料育成から、結晶構造、比熱、磁化、電気抵抗などの基礎物性はもちろん、ドハース・ファンアルフェン効果や極低温・強磁場・高圧といった極限環境下の物性測定も可能な実験装置を備えています。また国内や国外との共同研究も積極的に行っています。