プレスリリース・研究成果

量子ゆらぎが支配する2次元超伝導体の新規電子相を発見 ―量子計算へ向けた超伝導デバイスの実現へ―

2018/02/23

発表のポイント

  • 電界効果により半導体単結晶表面で原子層の厚さ程度の高品質2次元超伝導体を実現した。
  • 少ない乱れと大きな量子ゆらぎのコンビネーションにより出現する、多彩な超伝導量子状態を発見し、磁場による量子状態の制御に成功した。
  • 量子計算のための超伝導素子・集積回路の基盤となる技術と知見になることが期待される

概要

 東北大学金属材料研究所 野島勉 准教授は、東京大学大学院工学系研究科附属量子相エレクトロニクス研究センター・物理工学専攻の岩佐義宏 教授(理化学研究所 創発物性科学研究センター 創発デバイス研究チーム チームリーダー兼任)、同研究科物理工学専攻の斎藤優 大学院生の研究グループとともに、セラミック半導体の一種でかつ2次元物質と呼ばれる層状窒化物・塩化窒化ジルコニウム(ZrNCl)と二流化モリブデン(MoS2)の高品質単結晶表面にイオン液体を絶縁層として用いる電気二重層トランジスタ(EDLT)構造(注2)を作製することにより、ZrNCl及びMoS2表面に厚さ1~2ナノメートルで、乱れの極めて少ない2次元超伝導を実現しました。さらにこの2次元超伝導体に磁場を加えると、低温におけるON(超伝導状態)とOFF(絶縁体状態)という2つの極低温での量子状態の間に、さらに2つの特殊な量子状態が現れることを発見し、それら4つの量子状態を連続的に磁場で制御することに成功しました。これらの研究成果は、今後、新たな2 次元超伝導体の研究分野を開拓する上の重要な礎になるだけでなく、将来的な超高速・量子計算のための超伝導デバイスや超伝導集積回路といった最先端ハードウェアを開発する上で重要な知見になることが期待されます。

 本研究成果は、英国オンライン科学雑誌『Nature Communications』(平成30年2月22日版)に掲載されました。

 詳細1: プレスリリース本文 [PDF: 568KB]
 詳細2: Nature Communicationsウェブサイト [DOI: 10.1038/s41467-018-03275-z]

塩化窒化ジルコニウムZrNClを用いた電気二重層トランジスタ構造