国立大学法人東北大学 金属材料研究所の谷口耕治准教授、宮坂等教授らは、リチウムイオン電池に金属錯体から成る分子性材料を電極として組み込むことで、人工的にイオン制御可能な磁石を創り出すことに成功しました。リチウムイオン電池のイオン挿入機能を介して、電極材料中の金属錯体と連結した非磁性の分子に電子を導入し磁気モーメントを付与することで、物質全体に磁石としての性質を発現させました。さらに電池の放電状態を制御することで、磁気相転移温度を変化させることにも成功しています。
本研究の結果は、本来は磁石ではない物質を、イオン挿入という電気的な手法で人工的に磁石に変え得ることを示した初めての例であり、新しい機能性磁石の設計指針を与えるものです。また今後、リチウムイオン電池の可逆的な充放電機能を利用することで、電気的にスイッチング可能な磁気デバイスの創出につながることが期待されます。
本研究成果はドイツ化学会誌「Angewandte Chemie International Edition」オンライン版に掲載されました。
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詳細2: Angew. Chem. Int. Ed. Webサイト[DOI: 10.1002/anie.201601672]
リチウムイオン電池を用いた人工的な磁石創出の概念図。電池の放電により、リチウムイオン(黄)と電子(緑)が同時に正極物質に導入される。電子は電子受容体分子のTCNQ誘導体に選択的に注入され、磁気モーメント(赤矢印)が発生した結果、物質全体が磁石となる。