東北大学金属材料研究所の清水悠晴助教、青木大教授は、橘高俊一郎助教・榊原俊郎教授(東京大学物性研究所)、町田一成教授(立命館大)らとともに、磁性と超伝導が共存する典型物質UPd2Al3において、超伝導のギャップ構造を精密熱力学量測定によって初めて明らかにしました。
ウランの5f電子が強い相関を示す、いわゆる重い電子系ウラン化合物には、エキゾチックな超伝導体が多数知られています。この超伝導は従来型のフォノンを媒介とする超伝導とは全く異なる新奇な超伝導発現機構を持っていると考えられています。しかし、そのメカニズムが実験的に明らかにされた例はあまりなく、その解明は現代固体物理学における挑戦的課題のひとつとなっています。
この研究では、磁性と超伝導の共存を起こす重い電子ウラン系超伝導体UPd2Al3純良単結晶を育成し、その超伝導相内(Tc=2K)で高精度角度分解比熱測定(最低温度: 0.12K)を行いました。その結果、水平ラインノード(超伝導ギャップがゼロとなる部分)をもつ超伝導ギャップが重い電子バンドに存在していることを実験的に明らかにしました。さらにその準粒子励起構造が理論計算によってよく再現されることがわかりました。超伝導ギャップ構造はクーパー対の引力相互作用を反映するため、この結果は今後ウラン系超伝導の発現機構を解明する重要な手がかりにつながると考えられます。
※本研究の成果は、米国雑誌「Physical Review Letters」に掲載され、 Editors' Suggestionに選ばれました。
詳細:Physical Review Letters Webサイト[DOI:10.1103/PhysRevLett.117.037001]
六方晶の結晶構造(左図上)を持つ重い電子系反強磁性超伝導体UPd2Al3における極低温比熱の温度依存性(左図下)、および超伝導状態における各磁場下での比熱の極角(θ)依存性。超伝導ギャップ構造を反映した比熱振動が観測された。