プレスリリース・研究成果

熱を流すだけで金属が磁石になる現象を発見 -電子の自転「スピン」を使った熱利用技術の発展に貢献-

 東北大学 金属材料研究所のダジ・ホウ研究員、東北大学 原子分子材料科学高等研究機構(WPI-AIMR)/金属材料研究所の齊藤 英治 教授らは、通常の状態では磁化注(磁石の性質)を持たない金属が、熱を流すだけで磁石の性質を示す現象を発見しました。
 金をはじめとする磁石ではない金属は、温度を上げても下げても磁石になることはないと考えられていました。本研究グループは、イットリウム鉄ガーネット(YIG)という磁石の上に金の薄膜を張り付け、この試料の表と裏の間に温度勾配を作ることで、熱が流れている状態(熱非平衡状態)にしました。試料に対して垂直に磁場を加えながら、面に沿って金薄膜に電流を流し、電流と直角の方向に付けた電極に生じるホール電圧を測定しました。その結果、温度勾配に比例した大きさのホール電圧が金薄膜に生じることを発見し、この現象を「非平衡異常ホール効果」と命名しました。これは温度勾配によって金薄膜に磁化が生じている証拠であり、熱を流すだけで金属が磁石になることを世界で初めて観測したことになります。
 この現象は、単位体積あたり100万分の1電磁単位という極めて微弱な磁化を電気信号として観測できることから、熱非平衡状態での新しい磁化測定法として利用できます。また、熱と磁化との関係の理解が深まることで、熱を利用したスピントロニクスの研究が進み、日常生活で捨てられている熱を削減および利用する省エネ社会への貢献が期待されます。

 本研究成果は、2016年7月26日(英国時間)に英国科学誌「Nature Communications」のオンライン版で公開されました。

 

 詳細1: プレスリリース本文 [PDF: 595KB]

 詳細2:Nature Communications Webサイト[DOI:10.1038/NCOMMS12265]

 

電子スピンの世界(一例)