プレスリリース・研究成果

最高峰の強度-導電性バランスを 有するチタン銅合金線材の開発

2016/09/13

 東北大学金属材料研究所の千星聡特任准教授は、トクセン工業(株)(本社:兵庫県小野市)との共同で、実用銅合金最高クラスの強度-導電性バランスを示すチタン銅合金線材を開発しました。

 本線材は、銅(Cu)にチタン(Ti)を2.0~3.5 wt.% 添加した合金から得られる高強度かつ高導電性のワイヤーです。チタン含有量や伸線加工度を制御することで、右図赤線に示すような強度-導電性バランスを実現できます。これは、実用銅合金の中で最高峰の強度-導電性バランスを有するベリリウム銅(Cu-Be)合金線材(右図青線)と同等以上の性能です。Cu-Be合金はBeの希少性や有害性の点で問題があるため、本線材はその代替として有望視されています。

 一般に、Cu-Ti合金はCu-Be合金に次ぐ強度を有し、応力緩和性、耐熱性ではCu-Be合金を凌ぎます.しかし、導電率はCu-Be合金の半分以下であることが欠点でした。そのため、従来のCu-Ti合金を伸線加工して得られる線材でも、強度は比較的高いものの導電率は10%IACS[*]以下となります。

  本研究では、これまでの常識から逸脱した組織制御を施したCu-Ti合金を伸線加工前に供すること発案しました。これを伸線加工することによって、従来のCu-Ti合金線材(右図黄線)と比較して導電率が1.5~3倍で、強度も向上させた線材を試作することに成功しました。

 電気・電子機器の小型化、軽量化、高性能化に伴い、電子デバイスに使用する銅線では高強度化、高導電率化の要求は高まっています。今後の研究では、合金組成や熱加工プロセス条件の最適化を図ることにより更なる高性能化を目指すとともに、主に通電用接点部位などへの用途開発を推し進めていく計画です。

 本成果は、2016年9月13日付の鉄鋼新聞に掲載されました。

 

* 【%IACS】: 25oCにおける国際標準軟銅線(International Annealed Copper Standard)を基準にした導電率の割合

左図:分子性結晶 -(ET)2I3 におけるディラック電子の速度の増大。右図:分子性結晶 -(ET)2I3 におけるフェリ磁性の模式図。

図:開発線材、各種実用銅合金線材の引張強さ-導電性マップ