金属材料研究所強磁場超伝導材料研究センター 淡路 智助教授,渡辺和雄教授のグループは,多くの強磁場超伝導磁石(superconducting magnet)に用いられている実用ニオブ3スズ(Nb3Sn)超伝導線(practical Nb3Sn superconducting wire)を繰り返し曲げることで,超伝導特性の大幅な向上ができることを世界で初めて発見しました。今回,コイル形状でこの現象を確認することで,実用超伝導機器に本手法が提供できることを示しました。ニオブ3スズ線は,もろく少しの変形によって超伝導特性が大幅に劣化してしまうことが知られています。このため,超伝導線を使用する低温(摂氏-269度)に冷却したときに発生する熱歪みにより,超伝導特性が低下することは避けられないと考えられてきました。ところが,私達は,実際にニオブ3スズ線を繰り返して曲げると超伝導特性が大幅に向上する事を,世界で初めて発見しました。すなわち,繰り返し曲げることで線材を鍛えてトレーニングすると,本来歪みに弱いニオブ3スズ超伝導線が,これまでの定説を覆して特性を向上させるというものです。この結果は,ニオブ3スズ超伝導線を用いた超伝導機器のさらなる高性能化とコストダウンにつながると見込まれます。本成果は,低温工学・超電導学会等で発表された他,日刊工業新聞(2006年12月20日付),河北新報(2007年1月5日付)に掲載されました。
繰り返し曲げ処理による臨界電流の向上