プレスリリース・研究成果

精密数値計算により物質形成の根源的理解に成功

川添グループでは、安原洋東北大学名誉教授が物質形成には原子核と電子の引力相互作用が一番効いていると予測し、本郷研太博士研究員が水素分子を対象に拡散量子モンテカルロ法を用いた超大規模精密計算でそれが正しいことを突き止めました。標準的な教科書に載っているハイトラー・ロンドン模型や最小基底分子軌道法を用いた計算では、原子から分子や結晶が安定的に形成される条件が、逆に電子の運動エネルギーTを下げポテンシャルエネルギーVを増大させるという全くの間違いによって得られていました。広く用いられている第一原理計算や理論のモデル計算でも、系の全エネルギーEのみに注目した解析により同様の間違いをしていることが多いのです。孤立クーロン多体系に対するビリアル定理(2T+V=0)からTとVは独立ではなく、系の全エネルギーE=T+V=-T=V/2であり、電子が原子核に近寄ることで運動エネルギーTは増大し、その倍だけ引力エネルギーVを稼ぐことによって系の安定化が実現することになります。これは、全ての物質に対する絶対法則であり、60年代からいくつかの論文でも指摘されて来ましたが、これまで精密な数値計算による確定はなされていませんでした。この成果は日経ナノビジネス11月号で取り上げられて大きな反響を呼び、International Journal of Quantum Chemistryで公表されます。
HL=Heitler-London, DMC=拡散量子モンテカルロ法  水素分子の電荷分布は、1s軌道の重ね合わせでは全く表現できない。

HL=Heitler-London, DMC=拡散量子モンテカルロ法 水素分子の電荷分布は、1s軌道の重ね合わせでは全く表現できない。

川添グループ (計算材料学研究部門)