東北大学金属材料研究所の今野豊彦教授、木口賢紀准教授と、東京工業大学元素戦略研究センターの清水荘雄特任助教、同センター兼総合理工学研究科の舟窪浩教授らの研究グループは、極薄膜でも特性が劣化しない強誘電体エピタキシャル膜(結晶方位が揃った単結晶膜)の作製に世界で初めて成功しました。極薄単結晶膜の作製は、強誘電体膜の組成を検討して選択するとともに、薄膜を成長させる基材の結晶構造とその単位格子の長さを工夫することにより達成しました。
これによって、従来、安定した特性の強誘電体膜が得られないためにできなかった超高密度メモリーなど新規デバイスの作製が可能になり、高性能かつ電池が飛躍的に長持ちするスマートフォンなどの実現が期待されます。また薄くなるほど特性が劣化するとされた強誘電体の"サイズ効果"を覆すもので、"逆サイズ効果"特性の起源解明や新物質探索の加速につながる成果です。
最近、強誘電体の薄膜も見つかっていましたが、多結晶であり不純物相も存在するため、安定した特性を得ることが難しい状況でした。
今回の研究成果は2015年7月24日(金)、応用物理分野で大きな影響のある学術誌「Applied Physics Letters」オンライン版に掲載され、2015年7月28日(水) マイナビニュース 、8月4日(火)には日経工業新聞に掲載されました。
詳細(プレスリリース本文) http://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv-press_20150727_02web.pdf [PDF:437KB]
図:作製に成功した単結晶HfO2基強誘電体の高分解能像とそのイオンの配列。 ハフニウムイオン、イットリウムイオンおよび酸化物イオンの配列が走査透過電子顕微鏡像で直接確認できる。