プレスリリース・研究成果

AIと実験の融合で試行錯誤から脱却、 自律型研究基盤へのロードマップを提示 ―物理法則を組み込んだAIで水素貯蔵材料開発を加速―

2026/08/25

発表のポイント

  • 水素貯蔵材料、AI、計算科学、自動化実験を専門とする世界69名の研究者が、「信頼できるデータ」、「物理法則を組み込んだモデル」、「AIによる材料設計」、「自動化実験」を一体化する研究基盤を提案しました。
  • 高性能なAI手法が増える一方、研究を妨げている本質的な課題は、データの分断や測定条件・不確かさの記録不足、物理法則との不整合、予測と実験の弱い連携にあることを示しました。
  • 予測、合成、測定、モデル更新を繰り返す「閉ループ型材料探索」と、計算上の材料と実物を同期させる「デジタルツイン」により、試行錯誤から継続的に学ぶ材料開発へ移行するロードマップを提示しました。

概要

 水素は、再生可能エネルギーを貯蔵し、燃料電池などで利用するための重要なエネルギー媒体です。しかし、常温の水素ガスは密度が低く、安全かつコンパクトに貯蔵することが難しいため、水素を内部に取り込める固体材料の開発が進められています。AIは膨大な候補を素早く調べられる一方、分断されたデータだけを学習すると、実際には作れない材料や、必要な温度・圧力で動作しない材料を有望と判断するおそれがあります。

 東北大学を中心とした国際研究チームは、世界69名の専門家による検討をもとに、水素貯蔵材料のAI研究を「信頼できるデータ」「物理法則を組み込んだモデル」「AIによる材料設計」「自動化実験」の循環として結び直す枠組みを提案しました。重要なのは、AIの予測後に物理的な妥当性を確認するだけでなく、熱力学、反応の速さ、予測の不確かさ、データの出典、実験結果を最初から各段階に組み込むことです。本成果は、新材料そのものの発見ではなく、材料探索を再現可能で継続的に学習する研究へ変えるための指針を示した展望論文であり、2026年8月14日(現地時間)に米国化学会の学術誌ACS Energy Lettersにオンライン掲載されました。

詳細

図1. 本論文が提案する水素貯蔵材料探索の全体像。データベース、物理法則を組み込んだモデル、AIによる候補設計、自動化実験、デジタルツインを循環させ、予測と実験を相互に更新します。