研究成果のポイント
- リチウム金属電池の性能を左右する電解液濃度について、最適条件を判断するための新たな指標を発見しました。
- リチウムイオン(Li+)と陰イオン(TFSI-)が協調的に輸送される濃度領域では、リチウム金属が均一に析出・溶解し、高い充放電安定性が得られることを明らかにしました。
- リチウム金属表面近傍(深さ数十nm)の硬さと弾性率の定量評価により、イオンの協調輸送が機械的に安定な表面保護膜(SEI)の形成を促進することで、デンドライト成長を抑制することを実証しました。
概要
リチウム金属電池は、従来のリチウムイオン電池を大きく上回るエネルギー密度を実現できる次世代蓄電池として期待されています。しかし、充放電時に発生するデンドライト(針状リチウム)の成長が寿命や安全性を低下させるため、その抑制が大きな課題となっています。これまで電解液の高濃度化が有効とされてきましたが、最適な濃度を決定する指針は十分に明らかになっていませんでした。
東北大学金属材料研究所の李弘毅助教、市坪哲教授の研究グループは、LiTFSI/EC-PC電解液の濃度を系統的に変化させ、イオン輸送、リチウム析出・溶解挙動、および保護膜(SEI)の力学特性を包括的に解析しました。その結果、Li+とTFSI-の協調的な移動を示す濃度領域で均一かつ可逆的なリチウム析出・溶解と機械的に安定なSEI形成が実現し、優れた充放電安定性が得られることを発見しました。本成果は、イオン輸送特性とSEIの機械的安定性を指標とする新たな電解液設計指針を示すものです。
本成果は、2026年6月29日に学術誌ACS Electrochemistryにオンライン掲載されました。
詳細
- プレスリリース本文 [PDF: 554KB]
- ACS Electrochemistry [DOI: 10.1021/acselectrochem.6c00140]

図1. 電解液濃度がイオン輸送、SEI形成、およびリチウム析出挙動に及ぼす影響。(a) 各濃度のLiTFSI/EC-PC電解液の外観。濃度の上昇に伴って粘度が増加し、4.16 Mで室温における飽和濃度に到達しました。(b) 電解液濃度の増加に伴う溶媒和構造およびイオン輸送機構の模式図。(c) 各濃度の電解液におけるリチウム(7Li)およびフッ素(19F)の自己拡散係数。1-2 Mの濃度領域では両者の自己拡散係数が近い値を示し、Li+とTFSI-を含むイオン種の協調的な輸送が示唆されました。(d) 保護膜(SEI)を含むリチウム金属表面近傍における硬さと弾性率の比(H/E比)。Li⁺とTFSI⁻の協調的な移動が示唆された濃度条件では、より高いH/E比を示し、機械的安定性およびき裂発生抵抗の向上が促進されました。(e) 銅箔集電体上における初回リチウム析出後および溶解後の電極断面の電子顕微鏡観察像。イオン輸送特性およびSEIの力学特性の変化に伴い、リチウム析出物の平坦化・緻密化が確認されました。
