発表のポイント
- 酸素の電子スピンが磁石の性質に直接相互作用することで、磁石の酸素吸着量に応じ、強磁性(ON)と反強磁性(OFF)を連続的(アナログ的)に変調できる新材料を開発しました。
- この材料において、磁石がON状態から酸素吸着量の増加に伴い非磁性体に近いOFF状態へと滑らかに変化する様子を、世界で初めて連続的に観測しました。
- 本成果は吸着酸素量にきめ細かく反応する「アナログ磁石」として、次世代の酸素センサーや高性能分子デバイス開発への貢献が期待されます。
概要
酸素は、磁石の起源となる電子スピンを持つ最小の分子単位の一つです。もし酸素のスピンを磁石のON/OFFスイッチとして自在に利用できれば、酸素を選択的に検知・制御する新たな分子デバイスの開発につながります。
東北大学金属材料研究所の高坂亘 准教授と宮坂等 教授の研究グループは、酸素の吸脱着によって磁気相を切り替えられる磁石を報告してきました。しかし、酸素の吸着が進む過程で磁気相がどのように変化していくのかは未解明でした。
今回、本研究グループと大阪大学大学院基礎工学研究科 北河康隆 教授および武漢大学 張俊 教授らとの共同研究グループは、酸素ガスの吸脱着で磁石のON/OFFを制御できる二例目となる多孔性磁石を開発しました。本材料では、わずかな酸素吸着量で磁石の状態を連続的に制御できることが特長です。酸素の吸着量変化に応じて、磁石がON状態からOFF状態へと滑らかに移行する磁気相変化を時間経過とともに世界で初めて追跡することに成功しました。この成果は、単なる二元的ON/OFFスイッチを超え、アナログ的に調整可能な分子デバイス実現への道を拓くものです。
本研究成果は、2025年9月17日(現地時間)付で、アメリカ化学会誌Journal of the American Chemical Societyにオンライン掲載されました。
詳細
- プレスリリース本文 [PDF: 814KB]
- Journal of the American Chemical Society [DOI: 10.1021/jacs.5c120385]