プレスリリース・研究成果

らせん磁気構造の位置が電流で操作できることを実証 ─ 次世代スピントロニクス素子への応用に期待 ─

2025/02/06

発表のポイント

  • らせん状に磁気モーメントが整列したらせん磁性体に電流を流すと、らせん磁気構造が並進運動(スライディング)を示す現象を実証しました。
  • らせん磁気構造が電流によって操作できるので、それを活用した新しい原理のスピントロニクス素子の開発が期待されます。

概要  

 らせん磁性体と呼ばれる磁石においては、磁気モーメントがらせん状に整列します。らせん水車に水を流すと回転するのと同じように、ナノスケールのらせん磁気構造に電流を流すと、らせん軸の周りで回転することが理論的に予測されていました。らせん形状は軸周りの回転と軸に沿った並進が同じになるので、この電流による回転現象は並進現象でもあります。

 今回、東北大学大学院理学研究科の木元悠太 大学院生、同大学金属材料研究所の関剛斎 教授と小野瀬佳文 教授、東邦大学理学部物理学科の大江純一郎 教授らからなる共同研究グループは、らせん磁気構造に電流を流すと並進運動(スライディング)することを初めて実証しました。これにより、らせん磁性体において、ある位置にどの方向角度を向いた磁気モーメントがあるかが電流で制御できる可能性が示されました。この機能を用いたスピントロニクス素子の実現が期待されます。

 本研究成果は、2025年2月5日(米国東部時間)に米国物理学会の学術誌Physical Review Lettersに掲載されました。

 

詳細

 
図1. 電流で駆動されるらせん磁気構造の並進運動の模式図。らせん軸方向に電流を流すと、磁気モーメントに対し電流と直交する面内で回転する向きのスピン移行トルクが働く。電流の大きさがしきい値を超えると、らせん磁気構造が全体として並進運動を開始する。