プレスリリース・研究成果

実験・計算・AIを融合した多結晶材料情報学による マクロからナノへの材料解析手法を構築 ~複雑な多結晶の学理深化と革新材料創成の幕開け~

2023/12/20

発表のポイント

  • 多結晶材料の画像データにAIを適用して仮想空間に3次元モデルを作成
  • 3次元モデルを利用して材料性能を低下させる転位クラスターの発生領域を特定
  • 電子顕微鏡観察により転位発生源の原子配列とその形成過程を同定
  • 多結晶材料情報学の有用性実証により学術革新・材料創成への広範な貢献に期待

概要

東北大学金属材料研究所の大野 裕 特任研究員は、国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院工学研究科の宇佐美 徳隆 教授、横井 達矢 講師、情報学研究科の工藤 博章 准教授、小島 拓人研究員、理化学研究所 革新知能統合研究センターの沓掛 健太朗 研究員、大阪大学産業技術研究所の 吉田 秀人 准教授との共同研究で、実験・計算・AIを融合した多結晶材料情報学による材料解析手法により、複雑な多結晶材料の転位発生メカニズムの解明に成功しました。

本研究では、メートルスケールの太陽光パネルに用いられる多結晶シリコンの画像データに独自開発したAIを適用し、仮想空間に多結晶材料の3次元モデルを作成しました。その3次元モデルを利用することで、材料性能を低下させる結晶欠陥である転位クラスターの発生領域を特定しました。さらに、その領域の電子顕微鏡観察と理論計算を連携させることで、粒界がナノスケールの階段状のファセット注3)構造を形成して曲がり、転位が発生するというメカニズムを解明しました。このような複雑な多結晶材料中の現象解明は、実験・理論・AIを融合した多結晶材料情報学により、メートルスケールのマクロな材料から、現象を特徴づけるナノスケール領域を効率的に抽出・解析することで初めて可能となりました。

金属、セラミックス、半導体など、多結晶材料は極めて身近な材料です。本成果は、多結晶材料情報学が多様な多結晶材料の未解明現象の解明に有用であることを実証するものであり、学術の変革と革新的な多結晶材料創成への貢献が期待されます。

本研究成果は、2023年12月11日付アメリカのWileyが発行する『Advanced Materials』オンライン版に掲載されました。

詳細

図1  実験・計算・AIの融合を示す本研究全体の概要図