発表のポイント
- デアロイング現象を用いて、これまで困難だった鉄-マグネシウム間の強固なアンカー効果を伴う機械接合に成功しました。
- 鉄鋼材料とマグネシウム合金のように相分離する異種合金間の新たな接合技術として応用が期待されます。
- 自動車や鉄道、航空機など輸送機器用構造材料のマルチマテリアル化による大幅な軽量化を促進し、環境負荷の低減に貢献します。
概要
次世代輸送機器には、安全性の高い大量・高速輸送を低環境負荷で実現することが求められます。従来鋼板を適材適所で新材料に代替するマルチマテリアルの次世代基幹材料としてマグネシウム合金が本格的に検討され始めました。マグネシウム合金は、近年、燃焼性を克服する等、素材開発で大きな進展を遂げていますが、鋼板等の構造材料との接合技術の開発は、マグネシウムが鉄と相分離して合金化しない「自然の摂理」に阻まれ進んでいません。
東北大学金属材料研究所の加藤秀実教授、和田武准教授と東北大学大学院工学研究科大学院生の倉林康太氏は、異種金属間の混和と分離に由来して生じる脱成分(デアロイング)現象によって、相分離して強固に接合し得ない異種金属同士が、ナノ・ミクロンスケールで共連続に絡みあう特異な複合組織を自己組織化することに着目し、鉄部材とマグネシウム部材の接合面に、鉄とマグネシウムの微細な共連続複合組織を形成することで強固で理想的な機械接合を達成する“デアロイング接合技術“を確立しました。この技術は、相分離する様々な異種金属間の接合技術に広く応用が期待され、自動車、鉄道や航空機等の軽量化、低燃費化への貢献が見込まれます。
本研究成果は、2023 年 3 月16 日(英国時間)に、無機材料の構造と特性に関する専門誌Scripta Materialiaにオンライン掲載されました。
詳細
- プレスリリース本文 [PDF: 611KB]
- Scripta Materialia [DOI: 10.1016/j.scriptamat.2023.115404]
図1 (a) デアロイング接合によりMg/Fe60Ni40界面に形成した反応層のSEM像、(b)図1(a)中の赤枠(b)に示した反応最前線部分の高倍率SEM像、および、(c) Mg/Fe60Ni40界面に形成した反応層のミクロ組織を示した模式図(図中の赤矢印は破断発生部であるMg部材破断を示す)。