発表のポイント
- 高い強度と熱伝導性を併せ持つ複合酸化物分散強化銅合金の開発に成功しました。
- ジルコニウムとイットリウムの複合酸化物の高密度リアルナノ分散を実現しました。
- 高温作動ヒートシンク等への適用に向けて、大量製造技術開発の進展が期待されます。
概要
銅合金は優れた熱伝導性と強度を併せ持つことから、SDGs達成に不可欠な高効率のエネルギー輸送・変換機器において必須の材料です。ただし銅合金を高温で用いるためには、材料を強化する析出物や分散粒子が高温でも安定であることが必要で、それには酸化物が期待されています。東北大学金属材料研究所/大学院工学研究科 博士前期課程学生のGao Zimo氏(研究当時)、東北大学金属材料研究所の余浩助教、笠田竜太教授らの研究グループは、メカニカルアロイング法によってイットリウムとジルコニウムの複合酸化物をナノサイズの分散粒子として銅中に混合した新しい酸化物分散強化銅合金を創り出すことに成功しました。新合金は、従来のイットリウム酸化物を分散粒子とする合金の1.5倍の強度があります。また、強度上昇に伴う熱伝導特性の低下を抑制するための合金製造や熱処理の条件に関する指針が得られました。
本研究成果は、未来のエネルギー源として開発が進められている核融合炉の厳しい環境に耐えるヒートシンク用に開発を進める中で得られたものですが、高温で作動するヒートパイプや熱交換器等にも適用できる可能性があります。今後は大量製造に向けた技術開発や、材料特性の評価を進めます。
本成果は2021年12月21日に、Journal of Alloys and Compounds誌にオンラインで公開されました。
詳細
- プレスリリース本文 [PDF: 798KB]
- Journal of Alloys and Compounds [DOI: doi.org/10.1016/j.jallcom.2021.163328]