プレスリリース・研究成果

音波による磁石の向きの制御に世界で初めて成功 ‐携帯電話などに用いる弾性波デバイスの高度化に期待‐

2021/05/11

発表のポイント

  • 空気や物質の振動が波として伝わる音波は、物質の表面を伝わる場合は表面音波と呼ばれ、振動方向が回転していく性質があります。
  • 音波の振動方向の回転を、磁石の元となる電子の自転(スピン)に移すことにより、磁石の向きを制御することに成功しました。
  • 表面音波(表面弾性波)は高精度のフィルターとして携帯電話などに使われており、記録素子として広く使われる磁性との融合による、デバイスの高度化が期待できます。

概要

 音波は、空気や物質の振動が波として伝わる現象です。音波が物質の表面を伝わる場合は「表面弾性波」と呼ばれており、その振動方向が回転しながら伝わっていく性質を持っています。このような回転は、物理学的には、磁石の元となる電子の自転(スピン)と同様に「角運動量」と呼ばれる回転量で表されることが知られています。
 東北大学金属材料研究所の新居陽一(JSTさきがけ研究員兼務)、小野瀬佳文と東京大学大学院総合文化研究科大学院生および東北大学特別研究生(現在理化学研究所研究員)の佐々木遼は、表面弾性波から電子のスピンへの角運動量の移動を利用することにより、音波による磁石の向きの制御に世界で初めて成功しました。表面弾性波を用いたデバイスは、高精度なバンドパスフィルターとして携帯電話などに内蔵されており、記録素子として広く使われる磁性との融合によりデバイスの高度化が期待できます。本研究の詳細はNature Communicationsに2021年5月10日10:00(英国時間)に掲載されました。
 

詳細

 
 

図 電子スピンによる磁石の向きの制御。スピンがそろった電子による電流が磁石に注入されると磁石の向きが制御される。