発表のポイント
- 真空成膜技術を駆使して、天然に存在しないハニカム(蜂の巣)格子イリジウム酸化物の人工超格子を合成することに成功
- 量子スピン液体と呼ばれる特殊な磁気状態実現への新たなアプローチ
- 薄膜・界面の自由度を活用した磁気特性の理解や制御技術の開発に貢献し、将来的な量子状態制御素子への応用展開も期待
概要
量子コンピュータなどの量子状態制御への応用可能性から、量子スピン液体が注目されています。イリジウムイオンがハニカム格子(蜂の巣)上に並んだ化合物は、この量子スピン液体をもたらす物質として素子への展開が期待されています。
東北大学金属材料研究所の藤原宏平准教授、三浦径大学院生(研究当時)、塚﨑敦教授、東京大学大学院工学系研究科の柴田直哉教授らの共同研究グループは、イリジウムイオンがハニカム格子(図1、B = Ir)上に配列した新規酸化物Mn–Ir–Oの人工超格子を合成することに成功しました。本研究の意義は、1. 真空成膜条件下でも安定な結晶構造を保つイルメナイト型酸化物に着目してIrO6ハニカム格子の薄膜合成に成功したこと、さらに、2. 人工超格子技術を用いることによって、真空成膜手法が新物質合成技術として有用であることを示したことにあります。
この成果は、量子スピン液体の物質開発に新たなアプローチを提供するだけでなく、薄膜試料を用いた機能素子の開発にも役立つものと期待されます。
本研究成果は、2020年8月12日(英国時間)に、英国科学誌「Communications Materials」オンライン版に掲載されました。詳細
- プレスリリース本文 [PDF:886KB]
- Communications Materials [DOI: 10.1038/s43246-020-00059-1]