プレスリリース・研究成果

水/高圧氷の界面に ″新しい水″ を発見! 水の奇妙な物性の謎に迫る画期的な成果

2020/08/07

発表のポイント

  • 高圧下で水が凍ってできる氷の表面にこれまで知られていなかった水を発見。
  • 新しい水は通常の水とは混ざり合わず、異なる構造を持ち高密度であることを確認。
  • 水の異常物性を説明する“二種類の水”仮説を検証する新たな道を示すだけでなく、機能性材料の生成過程や太陽系天体内部の氷形成過程の解明に貢献する画期的な成果。

概要

 水は、ありふれた存在ですが、特異な物性を示す奇妙な液体であり、多くの自然現象を支配しています。東北大学金属材料研究所の新家寛正助教、宇田聡教授と北海道大学低温科学研究所、木村勇気准教授、産業技術総合研究所環境創生研究部門の灘浩樹主任研究員と東京大学大学院総合文化研究科先進科学研究機構の羽馬哲也准教授を中心とする研究グループは、室温−20oCに保たれた低温室内で水に高圧を加えることで結晶化する氷IIIを観察し、成長・融解する氷と水の界面に通常の水とは異なる未発見の新しい水の層が形成されることを見出しました。さらに、氷表面を濡らす新しい水の濡れ性と表面パターンから、新しい水の密度は通常の水よりも大きい上に、通常の水とは混ざり合わず、構造が異なることが示唆されました。この成果は、長年に渡る大きな謎である水の特異な物性を説明する“構造の異なる二種類の水の存在”仮説の検証に道を拓くものです。
 本成果は、アメリカ化学会が発行するThe Journal of Physical Chemistry Letters に7月24日(金)付でオンライン掲載されました。

詳細

図1: 水/氷III界面に形成する新しい水の偏光顕微鏡その場観察像。A:加圧・減圧により水中で成長・融解する氷III結晶。B:氷III表面の拡大像。画像a,b,dは図A中の四角a,b,及び記号d近傍の拡大像。C:観察された新しい液体の形状の模式図。図中の青及び赤の四角で示された模式図はそれぞれ、図B中青及び赤の四角で示された観察像の液体形状に対応している。