発表のポイント
- 福島第一原発の炉内と同等以上と思われる高線量(空間線量 1 kSv/h 程度)でも動作するリアルタイム線量計測の実証に成功した。
- 既存の青色発光ではなく、光ファイバーを通りやすい赤色発光で、高い発光量を示す新しい材料開発が今回の実証を可能にし、信頼性の向上にも寄与できた。
- これにより、炉内の線量分布の様子を、外側からロボットの遠隔操作などによりリアルタイムに判断可能となる。
- 燃料デブリなどの分布がより正確にわかり、迅速な廃炉のサポートが期待される。
概要
福島第一原発の廃炉作業を迅速に進めるには、空間線量が非常に高い炉内での線量測定が不可欠ですが、従来の放射線検出器は動作しません。 東北大学未来科学技術共同研究センターの黒澤俊介 准教授(兼山形大学 客員准教授)および金属材料研究所の小玉翔平(博士課程 3 年)らのグループは、三菱電機株式会社 先端技術総合研究所 センサ情報処理システム技術部光電磁センサグループ 林真照グループマネージャー、東哲史主席 研究員、笹野理 研究員、および、京都大学複合原子力科学研究所の田中浩基 准教授らとともに、20mの光ファイバーと新規発光体を用いて、空間線量 1 kSv/h 程度までの超高線量の幅広い線量領域で 、リアルタイムに線量の測定が可能であることを初めて示しました。これにより 廃炉作業の加速化が期待できます。本研究成果は、「 Applied Physics Express 」に発表されました。本研究は、日本原子力研究開発機構「英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業-課題解決型廃炉研究プログラム-」により実施した平成 30 年度及び令和元年度「アルファダストの検出を目指した超高位置分解能イメージング装置の開発」(研究廃炉の迅速化を可能にする高線量環境の炉内線量計測の開発-革新的な発光体材料の開発と高線量下での放射線計測への応用代表者:黒澤俊介 准教授、参画団体:東北大学、三菱電機株式会社、日本原子力研究開発機構)、JSPS 科学研究費助成事業19H02422, 19H04684, 18J21316 および京都大学複合原子力科学研究所 共同利用研究(P5-13) の成果の一部です。
詳細
- プレスリリース本文 [PDF:977KB]
- Applied Physics Express [DOI: 10.35848/1882-0786/ab77f7]
図1 通常(低線量下)での線量測定方法(①)とその方法での超高線量場測定の問題点(②)、および、超高線量環境での線量測定(分離型、③)の概念図