発表のポイント
- 超伝導の中に超伝導があるという、いわば「入れ子」構造の超伝導(多重超伝導)をウラン化合物UTe2において初めて発見した。
- 圧力・温度・磁場を変えることで、様々な性質を持つ超伝導相が現れる。
- トポロジカル超伝導さらには量子コンピュータへの応用などの波及効果が期待される。
概要
ウラン化合物のエキゾチック超伝導体UTe2は、量子コンピュータへの応用を見据えた激しい研究競争が日米欧で行われています。東北大学金属材料研究所の青木大教授の研究グループは、CEA-Grenoble(フランス原子力庁)とともに、UTe2の精密物性測定を行いました。その結果、超伝導が一様ではなく、内部に多様なタイプの超伝導相が含まれており、そのために磁場中で超伝導が誘起されるという驚くべき結果を得ました。超伝導の発現機構の根元に関わる成果です。多様なタイプの超伝導の存在を明らかにした本研究の成果は、超伝導の応用研究につながることが期待されます。
本研究の成果は、2020年5月号の日本物理学会英文誌「Journal of Physical Society of Japan (JPSJ)」に発表され、注目論文に選ばれました。
詳細
- プレスリリース本文 [PDF:442KB]
- Journal of Physical Society of Japan (JPSJ) [DOI: 10.7566/JPSJ.89.053705]
エキゾチック超伝導体UTe2の圧力下の磁場-温度相図。一様な超伝導ではなく多様なタイプの超伝導が実現している。また「超伝導4」では磁場中で超伝導が誘起されている。